家庭教師の依頼が来たのは11月でした。彼女はすでに2浪、尼崎で有名な公立高校出身ですが医学部となるとちょっときつい。さすがに今回が最後の受験と決めたらしく、医学部がダメなら薬学部にするとのこと。まさに背水の陣。時期が時期なのですべてを網羅的にみることはできません、弱点分野の補強とセンター対策に絞って、塾の講義テキスト・模試・センター実戦問題集や過去問を用いてやっていきました。実力的には標準ちょっと上という感じで特にずば抜けた実力をもった教科があるわけでもなく、総合力で勝負という感じでしたから、時間短縮と点数を上げるテクニック中心に教えていきました。
一方、12月に入って今度は1浪の生徒の依頼がありました。彼の場合は「いいところまで来ているのに今一つ抜け出せないので見てほしい」とのこと。で、実際に見てみると特に問題なくスラスラと解いていきます。単科医大はともかく総合大学では実力的には特に問題ないですよと伝え、総合系の大学の過去問を解説する形でやっていったのですが、年末あたりからなんだかんだとドタキャンが続きます。直前期なので都度次回日程を決めて行っていたのですがキャンセルが立て続くと日程設定が困難となります。まぁ時期も時期だし思うようにやればいいでしょうということでほとんど没交渉になってしまいました。
さて、センター試験が終わり結果を見ると、その年は簡単な年で平均が高く、医学部のボーダーも軒並み上がりました。はじめの尼崎の子も得点率90%ちょうど、例年ならよくやったですがそうは言ってられません。神戸・市大では届かないし、単科医大は実力的に難しい。結局地方の国公立で考えるしかないのですが、有名どころのボーダー点が高いので受験生が志望校を落として殺到するのは目に見えています。さてどうしたものかと考えた結果、前期は香川にしました。香川はその年受験科目を増やして敬遠されていました。数学は単科医大時代以来の伝統で少し難しく気になったのですが理科は工学部と同一問題だろうと予想を立て、まぁ近畿からそう大きく離れるわけでもないからここにかけようと決めました。後期はそんなこと言ってられません。小論・面接だけだと結局センター点がモノいうのでセンターリサーチでA判定出ていないとギャンブルになってしまいます。結局そこまでの点数はなく、学力試験のところを探してもどこも高倍率で難しい。今年で最後となれば岐阜送りにもできない。比較的マシなところが旭川なのでそこでどうかと聞くとさすがに「えぇ~~!?」と一言。とそのとき遠くからお母さんの声が。「四の五の言ってられないでしょう!!」この鶴の一声で決まりました。
さて、受験校を決めたらそこからがまた大変です。滑り止めの薬学(大薬/神薬)は落とせませんし、香川は数学がきついのでまずは無理せず部分点狙い。できる範囲を着実に解いて、それを答案にするときに論理的に書くことを心がけてやっていきました。またよほど旭川が嫌らしく、「ダイアモンドダストが見られるぞ、クマ出るぞ」というと必死に過去問を解いていました。
一方、後のほうの生徒はというと、センターは92%強とったようです。結局、こちらには連絡のないまま家庭教師センターと相談して志望校を決めたそうです。神戸はボーダーなので安全策をとって徳島にしたとのこと、たしかにセオリー通りだけど殺到するだろうから大丈夫かと思っていたら、案の定すごい倍率。あららと思っていたら連絡があってまた来てくださいとのこと。2月まわってもう入試まで日にちもないのに… と思いながら伺いました。行くと「安全策を取ったから大丈夫」と口癖のように言ってました。結局、時間もあまりないので答案作成中心に見ていくようにしました。
さて、結果ですが、はじめの生徒は滑り止めを含めて合格しました。特に香川の発表のときは家まで行ってパソコンの前で「いよいよやね、さあクリック、クリック」というと、「先生、趣味悪い~」と言いながらも発表を見て、自分の番号をみつけるとすっかり泣き出してしまいました。しばらくすると郵便が来て合格通知書がやってきました。「この紙のために今までどれだけ苦労したか」というと今度は周りにあった参考書・問題集を捨てはじめました。さすがにそれはと思い、「ほなそれもらって帰って後の生徒さんのために使うわ」というとあれもこれもと出るわ出るわ、車がいっぱいになってしまいました。でも本当によかったです。
一方、後の生徒ですが、こちらはダメでした。後期を岐阜にしていたようですが倍率が高くてほとんど戦意喪失。授業中何度も涙が流れ、それをぬぐうこともしない姿を今も忘れられません。どうやら線の細い生徒さんだったようですが、実力的には行ける能力を持っていただけにもったいなかったです。センター前に休むなら休む、センター後はいつから来てほしいとしっかりと伝えておいていただけたら、受験校も違っていただろうし結果も違っていたかもしれません。家庭教師を使うときは使い方というものがあるのでうまく使っていただければと思います。